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12 枚のスライドで契約を締結:シード期の資料で VC が本当に知りたいこと

本ブログでは、プレシード期に成功するピッチ資料の作成方法と、成否を左右するセクションについて説明します。
Justin Izzo headshot
Justin IzzoResearch Lead, Dropbox DocSend
2022年5月3日
What VCs really want to see inside your seed deck

もしあなたがシード期の創設者で、あなたの製品に魅力を感じてくれる潜在的投資家を見つけようとしているなら、ピッチ資料に専念してください。シンプルに構成され、考え抜かれた資料は、すぐに VC の注目を集めるだけでなく、あなたの会社が次の成長に向けて好位置にいることを VC に確信させてくれます。

このブログでは、シード期に成功するピッチ資料の特徴や、VC が各セクションに費やす時間、投資家が資料に求めている具体的な情報について説明します。

シード期のピッチ資料の目的

創業者は、シード期の資料を使用して潜在的投資家に製品と市場での可能性を知ってもらい、魅力を感じてもらいます。最終的には資金調達のためのツールとして使用します。資料は、VC がすぐに理解できる説得力のあるストーリーを伝えられるような構成にします。

投資家がシード期の資料を閲覧するのに費やす時間

VC はシード期のピッチ資料を閲覧するのに平均 3 分 20 秒かけていることがわかっています。VC の関心をつなぎとめられるのは 4 分未満であるため、シード期の創業者は、資料の冒頭部分で VC の注意を引かないと全部を読んでもらえません。

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シード期に成功するピッチ資料の特徴

成功するピッチ資料にはそれぞれに独自性がありますが、それと同時に、VC の注意をすぐに引き付けられるように設計された統一的な構造があります。これから紹介する様式、コンテンツ、スライドの順番に関する明快なガイドラインに従えば、VC の興味を引き付け、投資を促す説得力のあるストーリーが語れるようになります。

シード期のピッチ資料に必要となるセクション

以下のセクションで構成された 19~20 ページの資料が多忙な投資家の注意を引き付けるのに最適であることがわかりました。

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スライドの順番が重要であることを忘れないでください。シード期の資料のほとんどが同じ構造をしていますが、上に挙げたセクションの最初の 4 つを資料の冒頭に置いた創業者は、他のアプローチを採用した創業者より資金調達に成功する確率が高くなっています。

以下では、これらのセクションの内容と目的を説明します。さらに、VC が資料に求めている、成否を左右する情報を記載する際にすべきことと、すべきでないことを紹介します。

セクション 1:会社の目的

これはシード期の資料で最初のスライドになります。会社の目的を 1 行で明快に要約する必要があります。

すべきこと:会社を他人にアピールする。最も興味を引く言葉を選ぶことと、理解しやすい言葉を選ぶことは同じくらい重要です。目的の表明は心をつかむだけでなく明快でなければなりません。そうなっていなければ、振り出しに戻って、ふさわしい言葉が見つかるまで考えてください。

すべきでないこと:必要以上に難解にする。ビジョンの表明が難解または曖昧なものになっていませんか。多忙な VC には、それを読み解くのに必要な時間も関心もありません。会社の目的はシンプルかつ簡潔で記憶に残るものにしてください。

  • セクションの長さの目安:1 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.3 ページ

    • VC がここで費やす時間:26 秒

セクション 2:課題

課題セクションは、会社の目的のすぐ後に続きます。このスライドでは、会社が解決しようとしている 1 つの課題を広い視点で取り上げます。

すべきこと:業界内外の人が身近に感じるようにする。経験則として、解決しようとしている課題を友人や家族が理解できなければ、投資家もおそらく理解できません。

すべきでないこと:必要以上に難解にする(再出)。シンプルで誰もが理解できるわかりやすい言葉を用いて、広い視点で課題を定義してください。投資家は、課題を理解できなければ解決策に投資する価値を見出せません。

  • セクションの長さの目安:1〜2 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:2.15 ページ

    • VC がここで費やす時間:34 秒

セクション 3:解決策

「解決策」セクションは課題の表明と対になっていると考えてください。これまでに定義した課題に対する解決策の骨子を明快に広い視点で説明します。

すべきこと:提案している解決策が、市場にあるどの解決策とも異なる理由をはっきりと説明する。問題解決に向けた戦略が創造的でかつ他より優れている理由を説明してください。投資家は、あなたの製品やサービスが他と異なっている理由を知りたがっています。

すべきでないこと:技術的な詳細に立ち入る。製品の詳しい説明は後にします。ここでは、課題との整合性を意識しながら、解決策を明快で理解しやすく表明します。

  • セクションの長さの目安:1〜2 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.5 ページ

    • VC がここで費やす時間:34 秒

セクション 4:市場規模

シード期の資料で 4 番目のセクションとなる市場規模のスライドでは、包括的な市場分析を行い、ターゲット顧客を定義する必要があります。

すべきこと:TAM、SAM、SOM の市場調査の結果を示してこのセクションを万全なものにする。VC は短期と長期の両方の視点を大切にしています。最初の数年内に見込める投資回収時期だけでなく、投資家にとって長期的なチャンスがあることも示してください。

すべきでないこと:このセクションを最初の 3 セクションに関連付けるのを忘れる。目的、課題、解決策、市場規模のセクションが、投資家に続きを読みたいと思わせるような、まとまった説得力のあるストーリーを構成している必要があります。

  • セクションの長さの目安:1〜3 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.7 ページ

    • VC がここで費やす時間:29 秒

セクション 5:今こそ投資すべき理由

プレシード期とシード期の段階ではこのスライドは任意です。このセクションを設けると、課題と解決策が市場で緊急を要するものであることを強調できます。

すべきこと:自社に現実味を持たせている市場環境について(もしあれば)考察する。解決策を提示している課題や機会には、何か他とは異なる点があるでしょうか?このセクションでよく目にする例としては、社会正義、新型コロナウイルス、気候変動などがあります。

すべきでないこと:課題に時期的な制約が特にないにもかかわらず、このスライドを含めることにこだわる。このセクションは、市場環境での緊急性について有用なインサイトを提供するために使用できますが、シード期の創業者の誰もが使用しているわけではありません(その必要もありません)。

  • セクションの長さの目安:1 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.5 ページ

    • VC がここで費やす時間:23 秒

セクション 6:製品

「製品」セクションでは、ビジネス上の課題を解決するために構築した独自の機能を強調します。

すべきこと:ここで製品の準備状況を詳しく説明する。3~5 枚のスライドを用意して、製品の最も重要な機能を説明してください。ワイヤーフレーム、スクリーンショット、埋め込み動画、Figma のモックアップなどを活用します。

すべきでないこと:このセクションが潜在的投資家にとって重要であることをくどくどと述べる。製品のセクションは資料の中で最も精査を受けるセクションの 1 つです。この機会を生かして、VC に製品の使用イメージを正確に伝えるようにしてください。

  • セクションの長さの目安:3〜5 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:3.3 ページ

    • VC がここで費やす時間:59 秒

セクション 7:競合他社

競合他社のセクションでは、同じ業界で競合する企業と、自社の製品がその企業のものと異なる理由を明快に要約します。

すべきこと:自社と密接に競合する企業と製品に焦点を当てる。自社と同じ段階にある企業や最近資金調達に成功した企業を含めてください。このセクションでは、比較表を作成し説明を加えると効果的でしょう。

すべきでないこと:同じ業界にいる大企業の後を追いかける。VC に対し、市場で本当に競合する企業を示しながら、競合他社ができない方法で課題を解決することをはっきりと説明します。

  • セクションの長さの目安:1 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.3 ページ

    • VC がここで費やす時間:34 秒

セクション 8:トラクション

このセクションでは、製品の段階に基づいた注目すべきトラクションについて詳しく説明します。トラクションには、現時点での顧客、見積もり、顧客の声を含めることができます。

すべきこと:市場の重要なトラクションとして種類が異なるものを複数示す。VC がトラクションを評価するために費やした時間を比較すると、資金調達ができなかった企業で 80 % 多くなっていることがわかりました。市場のトラクションが投資家にとって身近なものでなければ、疑念を呼んで精査の対象になる可能性があります。これは良い結果に結び付かないかもしれません。

すべきでないこと:示すものが足りないことに悩む。投資家は製品が置かれている段階を考慮してくれます。意向表明書、顧客の声、顧客パイプライン、ベータ フィードバックなど、製品の段階にふさわしいものを盛り込めばよいでしょう。

  • セクションの長さの目安:1~4 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:2.3 ページ

    • VC がここで費やす時間:40 秒

セクション 9:チーム

チームのセクションでは、創設チームのメンバーを紹介し、課題の解決に適任である理由を記述します。

すべきこと:チームのメンバーが問題の解決に適任である理由を説明する。LinkedIn のプロフィール写真、経歴、関連する職歴を活用して、背景と保有スキルを紹介します。VC はすばらしいアイデアと同じくらい個人に関心を寄せていることを忘れないでください。

すべきでないこと:このセクションに 2 ページ以上使う。ここは必然的に最も詳細で言葉の多いセクションになります。したがって、本当に必要なこと以外は記載しないようにしてください。

  • セクションの長さの目安:1〜2 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.5 ページ

    • VC がここで費やす時間:38 秒

セクション 10:ビジネス モデル

「ビジネス モデル」セクションでは、長期にわたって再現可能な明快で理解しやすい収益化戦略を示し、その骨子を説明します。

すべきこと:投資家に本格的な事業を構築しようとしていることを示す。VC はこのセクションの閲覧に最も多くの時間を費やします。そこで、収益を上げるための方法とビジネス モデルの特徴を説明してください。

すべきでないこと:このセクションを後から考える。ビジネス モデルと収益化計画は製品戦略と並行して構築してください。そうすることで最初から整合性のとれた構築が可能になります。

  • セクションの長さの目安:2〜3 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:2.8 ページ

    • VC がここで費やす時間:64 秒

セクション 11:財務

「財務」セクションは任意です。ここでは、戦略的に支出した実績やバーン レートについて説明します。

すべきこと:これまでの支出が前向きな成果をもたらしたことを説明できるなら、このスライドを追加する。このセクションが設けられている場合、資料の中でこのセクションの閲覧に費やす時間は 6 番目に長くなっています。前向きな成果をもたらした実績があれば、VC はそれを知りたいはずです。

すべきでないこと:以下の点を検討せずにこのセクションを省略する。以前に調達した資金をどのように投入したのか。どのようなリソースに資金を支出したのか。その投資が目標としているビジネス成果の達成にどのように貢献したのか。

  • セクションの長さの目安:1~2 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.4 ページ

    • VC がここで費やす時間:37 秒

セクション 12:投資の要請

「投資の要請」が資料の最後のセクションになります。このセクションでは、調達したい金額とそれを支出する計画について投資家に説明します。

すべきこと:資金の支出目的について慎重に検討する。たとえば、要員を増やす、研究開発の拡大に投資するといった目的が考えられます。自社の次の時代を定義しようとしているなかで、出資の要請はその成長を直接サポートするものになります。

すべきでないこと:思いつきの数字を挙げる。必要な金額を正確に示し、計画している支出について理由と方法の正当性を主張できるようにしてください。

  • セクションの長さの目安:1 ページ

  • 業界平均:

    • 平均的な長さ:1.2 ページ

    • VC がここで費やす時間:32 秒

考え抜かれたピッチ資料で印象を残す

潜在的投資家の注意を引くことはこれまでになく困難になっています。シード期の創業者にとって成功を収めるピッチ資料の作成が必須なのはこのためです。考え抜かれ、よく構成されたピッチ資料を作成することで、成長の見込みのある企業を築くために費やした時間と調査、さらには取り組み姿勢を投資家にアピールできます。自分のアイデアとビジネスが投資家にとって投資に値するものである理由を示すことができます。

著者について

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Justin Izzo

Research Lead, Dropbox DocSendJustin Izzo is Research Lead, DocSend at Dropbox. He joined DocSend in 2020 to run startup and venture capital fundraising research. Previously, Justin was a Professor at Brown University and Duke University. He also received his Ph.D. from Duke University.
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